全国的な知名度を誇る明石鯛。春と秋に旬を迎え、それぞれ桜鯛、紅葉鯛と呼ばれ珍重されています。秋の紅葉鯛は、その名の通り黄色がかった赤色の美しい見た目が印象的。餌となるエビやカニなどの甲殻類が豊富な夏場に、それらを好んで食べることで体が美しく色付くのです。
漁師さんや魚屋さんなど魚のプロによると、同じ明石鯛でも春と秋では色以外にも大きな違いがあるのだとか。初夏の産卵を控え栄養を卵に蓄えている春に対し、産卵後の夏にたっぷり餌を食べて越冬に備える秋は、身の栄養も脂ののりも抜群だそうです。秋に美味しさのピークを迎える明石の紅葉鯛、ぜひ一度ご賞味ください。
「この道ひと筋で明石の魚と向き合ってきた中で実感しているのは、やっぱり明石鯛は秋の紅葉鯛が一番だということです。さっぱりした味わいの春の桜鯛に比べ、秋の紅葉鯛は脂ののりと旨味が格段に違いますから。シンプルな刺身はもちろん、煮ても焼いても鍋に入れても抜群に美味しいです。また、店自慢の味噌漬けは、紅葉鯛の美味しさを存分に味わえる品として、初代の頃から数多くのお客様にご愛顧いただいています。」
大東さんが店主を務める魚利商店は、昭和26(1951)年の創業から70年以上続く老舗鮮魚店。店先には、店主自ら明石浦漁業協同組合で競り落とした、質も鮮度も抜群な昼網と呼ばれる魚介が並びます。
お店の名物となっているのが、明石鯛の味噌漬けです。店内の生簀で一晩活かしリラックスさせた明石鯛に神経締めなどの下処理を施し、三枚におろして絶妙な厚みの切り身に。塩で余分な水分を抜いた後、初代から受け継ぐレシピでブレンドした秘伝の味噌を塗り込み冷蔵庫で寝かせます。食べ頃は、仕込みから4~5日後。添加物を一切使っていないため、味噌が引き出した明石鯛本来の旨味を感じられる逸品です。